指折り数える(指数字)

 AKB48の『スカート、ひらり』の歌で、サビに入るところの

「恋をするたび」

が1音ずつ上がっていくのが心地よい。そしてその時の、指を1本ずつ折っていく振り付けが、あたかも恋を数えてるようできめ細かくて感動した、と先日書いた。

 AKB48の客席には、最初から最後までえんえんと、すべての振り付けを真似つづける人がかなり多い。あれはハロプロの芸風なのだろうか。それにしては、指折り数えてるところを真似してる人は不思議と少ないように見える。動きが細かいので落としてしまうのだろうか。

 そこの振りがとても気に入ったので、そこだけは真似してみようと思い、やって見て気がついたことがある。それは、私はパーから小指から折っていったのに、目の前の実際の女の子たちの振りは、パーから親指から折っていったということだ。

 考えてみると、パーから小指から折っていく私のやり方は、ロシア語を学んだときに一緒に身についたものだ。ロシアではそうする人が多い、と聴いて戯れに真似ているうちに、自然に身についてしまったのである。中学生は何にでも簡単に影響されるのだ。それまでは、グーからひとさし指から立てていく数え方を子供のころからしていた。

 だが、日本本来の「指折り数える」数え方は、AKB48の彼女たちがやっているような、パーから親指から折っていくやり方なのだろうと思う。少なくとも、グーから指を立てていくというのが日本古来ということはありえない。もしもそれが日本古来のやり方ならば、「指折り数える」という日本語表現は無く、かわりに「指立て数える」とか「指開き数える」などと言っていたはずだからだ。

 ちなみにベトナム語を学んだ時、ベトナムの女性はグーからひとさし指から立てていくが、男性はグーから親指から立てていく人が多く、そのほうが男らしいと考えられていると知った。私の子供のころの数え方は、ベトナム人の女性と同じだったわけだ。

 などと考えていたら興味がわいてきたので、以下、軽くネットで検索してみた
【世界の「指で数える」数え方(指数字)】

  • 旅々台北 台湾式の指数字 …… 台湾式指数字。6以降の複雑な取り決めについてはひとまず措くとして、このページの書き手(日本人だろう)が、「日本と同じで、人差し指を1本立てます。」と書いているのが嬉しかった。私の子供のころの数え方は、日本で少数派ではないと知ったからだ。
  • http://www.zephyr.dti.ne.jp/~runo/abc/column.html …… イギリス人はグーから親指から立てて数えるらしいとのこと。ベトナムの男性と同じですね。ちなみにこの人も、「日本人が指で数を示すとき、1は人差し指で、中指、薬指と立てていき、最後に親指を開いて5とするのが普通ですが、」と言っている。今の日本ではむしろ、指折り数える人のほうが少数派なのかもしれない。
  • 出川哲朗 - Wikipedia …… 日本人のあるタレントは、親指から数えるそうだ(グーからかパーからかは言及なし)。それがこの人の「特徴」として特記されてるところを見ると、日本人としては珍しいことだと認識されているのだろう。
  • sanmateo2.com …… フィリピン人は、グーから小指から立てていくそうだ。
  • http://atobu-wanwan.269g.net/article/1606055.html …… 日本人で、グーから小指から立てていく人もいるという話。先祖がフィリピンから舟こいで来たのだろうか。そう報告している書き手の「普通」は、パーから親指から折っていくやり方。AKB48方式だ。
  • http://www.shirakami.or.jp/~eichan/oms/omsxx/oms73.html …… 第二次世界大戦のころのイギリス人の小話。彼は言う。中国人ならイギリス人と同じでグーから指を立てていくはずなのに、この人はパーから指を折っていったから、日本人だ! このイギリス人の知識が確かなのなら、当時の日本人は「指折り数える」という日本語どおりの数え方が普通だったことになる。それが親指からなのかひとさし指からなのかはこの話からは不明だが、パーからひとさし指から折っていくというのは私にはなんだか不自然に思えるので、たぶん親指からなのではないかと根拠なく推測する。もしこの推測が正しいなら、AKB48の振り付けは、日本古来の指数字の方式にのっとっていることになるわけだ。


 ところで、日本では指で数を数える仕草は、放送コードにひっかかるってホントですか?

「指が足りない人への配慮」

とのことなのですが…だとすると「スカート、ひらり」のあの振りは放送禁止なのでしょうか。もしかして、その時だけ顔アップから引いていくとかいう露骨なカメラワークがあったりして…。
 世知辛い国ですのぅ。