秋葉原ドンキホーテ

 仕事帰りにAKB48に行くときは、岩本町で降りることになるので、ヨドバシカメラの北辺を西へ歩いてガードをくぐり、UDXビルの西南隅を早足ですり抜けていくことになる。裏側から見る秋葉原ドンキホーテの建物はまったく飾り気がなく、灰色むきだしの壁面をさらしている。そうして見ると大きさもたいしたことないことに気づいてしまい、あのてっぺんに、あのシックなAKB48劇場が納まっているとはにわかには想像しがたい。

 ドンキホーテDQNのつどう場所、いつ火事で死んでもおかしくない所という印象があり、新宿などへ行っても決して中に入ることはしなかった。だがAKB48劇場へ行くには入らざるを得ない。店内には所狭しとモノがあふれさせてあり、壁いっぱいに無数の宣伝文句が思い思いにがなりたてていて、案の定どう見ても安売りナンデモ店だ。秋葉原店は他の支店とはやや雰囲気が違うというが、どう違うのかはわからない。

 ドンキホーテは、価格破壊とその品揃えの豊富さを売りとして急成長をとげた。だが考えてみると、この2つの特質は、AKB48にもそのままピッタリ当てはまってしまう。なるほどAKB48ドンキホーテの頂上にいる理由が、よくわかった気がするのである。

 …などと書くと、

「入場料を安くしてるのは、それで人を集めておいて、高いグッズを買わせようとしているからだしょしょ」

と言う人がある。

 たしかに、そう思えるような商品が目につくのも事実だ。とりわけ

  • 20枚セットの特典つきCD
  • 100回観覧すると殿堂入り

などは私も、よくやるなあ、そしてよく買うなあ、と半ば感心する。FOMAも買わなきゃいけないだろうし(笑)、つきあってたらカネがいくらあっても足りないだろうなあ、と。

 だが、それは客の経済感覚で言っているのであって、AKB48の側から見れば、

  • テレビ電話とか
  • TOKYO★1週間とか

への大々的な展開ぶりや、

の政治的実力を見ていると、グッズの売り上げなんてのは、たとえそれが客一人何万円・何十万円の単位であろうと、AKB48にとっては微々たるものではないかという気がする。そんな小さな財布から切実に搾り取りたいとはきっと思ってない、そこは、話に聞く末期のSKi等とはぜんぜん違う点ではないかと思う。

 グッズを買うというのは多分に客の自己満足の面があって、己のファン度をモノとして具現化しようとする行為のひとつであるから、その観点からは、値段は高ければ高いほど良いわけだ。だとすればそれは、女が買うブランド品が高い理由とまったく同じかもしれない。

「これ買った私ってすごくなーい?」

と見せびらかして歩く、その本人が幸せであればそれでいいのだ。ブランド物に高いカネを払うとき、人は、こんな高い物を買ったすごい私という満足感を買っているのである。グッズそのものはその自己満足感のよりしろにすぎない。